チラックス研究所

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ロジカルに考えた日本の処方箋:新・所得倍増論、デービッド・アトキンソン

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日本のGDP世界3位の地位は人口の多さによるもので、1人あたりGDPは世界第27位。

筆者は読者に問いかける ”皆さんが学校でこんなに熱心に勉強して、塾にも通って、就職してからも毎日長い時間を会社で過ごし、有給休暇もほとんど消化せず、一生懸命働いているのに、「生産性は世界第27位」と言われて、悔しくないですか。先進国最下位の生産性と言われて、悔しくないですか。” と。

確かに、6年弱ロンドンで暮らし、ヨーロッパ各国を旅行して感じたのは、中流以上の人たちの物質的、(特に)精神的な豊かさ。

ほとんどの人にとって長時間労働という概念はなく、有給休暇は使い切るのが当然、2、3週間連続の休みも珍しくない。たっぷりある余暇時間には様々な趣味を楽しむ。それでいて給料は日本の同等の仕事をする人より高い。日本の1人あたりGDPが世界27位、先進国最下位というのはその通りなのだろう。

人口が増えない中で経済成長するには、生産性向上しかない。筆者は、労働者全員の仕事のやり方、各業界のあり方、人の配分などを根本的に変える必要があると説く。

失われた20年以前の日本が経済成長していた時代にも、様々な非効率はあったが、人口増がそれを補って余りある効果を発揮していた。

その人口ボーナスステージが終わり、生産性向上に向き合わなければいけない時代はとっくに来ている。どうすればよいのか?

筆者は、”生産性向上は、労働者が自ら進んで行うことではなく、間違いなく経営者がなすべきこと”だが、経営者にそのインセンティブはないので、政府が国家として経営者にプレッシャーをかけて、経営者に成長戦略の実現を求めるよう、真剣に働きかけるべき、と主張する。

主観的にも客観的にも、日本の一人一人の労働者の能力は全然低くはなく、むしろ優位にあるので、無駄を省き意識を変えれば、未来は暗くないはず、とも思う。

著者は菅首相とも仲良しで成長戦略会議のメンバーにもなっている。彼の思う改革案が実現されていくだろうか。

デービッド・アトキンソン「新・所得倍増論」

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