大坂なおみが全豪オープン女子シングルスで優勝し、これで昨年9月の全米オープンに引き続き、グランドスラム(四大大会)2連続優勝となりました。全豪オープン後の世界ランキングでは1位に上り詰め、日本でも連日ニュースを賑わせていたと思います。
さて、テニスは世界中の人が見ているスポーツなので、当然日本以外でも大きく報道されています。その中で、イギリスのエコノミスト誌が優勝の2日後に大坂なおみについての分析記事を掲載しました。
英エコノミスト誌は、ビジネスパーソンも多く読む週刊新聞で、国際政治、経済を中心に、科学技術、スポーツ、芸術なども取り上げています。要するにまともなメディアです。
記事の内容は、Dominance Ratio (DR、試合の支配率) などを用いて偉業を冷静に分析するもので、なおみ時代の到来可能性についても考察しています。2018年のなおみのDRはセリーナ・ウィリアムズに次ぐ数字で、前ランク1位のハレプよりも上でした。若さに加え、プレーに向上の余地が十分あることなどから、総じてポジティブな見方をしています。
著者は Jeff Sackmann 氏で、エコノミスト誌の専属記者ではなく、テニスのデータ分析サイト Tennis Abstract を主宰している人です。エコノミスト誌への寄稿は大坂なおみのこの記事だけでなく、過去にも多くあります。種々のデータ分析の結果はブログで公開しており、ポッドキャストもやっています。要するにテニスデータについては相当詳しいです。
テニスのコアなファンではなくても、エコノミスト誌の一般読者はこの記事を目にすることができ、読めばテニスというスポーツの深みに触れることができます。これはとても恵まれたことです。
エコノミスト誌と提携している読売新聞も、なおみが「カツ丼を食べたい」と言ったことを報道している場合ではなく、この記事の和訳を載せてほしいものです。日本のメディアは、スポーツの世界で彼女が成し遂げてきた事がどんな価値があるのか、正面から取り扱ってほしいと思います。
日本では、まともなメディアと言われる大手新聞社でも、ときにワイドショー的な下世話なネタに走る傾向があります。視聴者、読者がそれを期待していることの裏返しかもしれませんが、残念なことです。
まとめると、スポーツに関する深いデータ分析が「一般誌」のエコノミスト誌に載っていて、それは広くスポーツ文化の醸成に役立っているのではないか、という感想でした。日本もそうなるといいなと思っています。
日本では今のところ、「スポーツ総合雑誌」ナンバーがその役割を担っているのかと思われますが、一般誌ではないので最初からスポーツ好きの人しか読まないし、コンテンツが人間ドラマに寄りすぎな傾向があるかなぁという気がしています。